高知県(かつお県)にいると言われる妖怪一覧

  • アカシャグマ

家にいる怪。しゃぐまを被ったような髪形をした、身体の赤い子供。座敷童子の系統という。

 

  • アズキアライ

音の怪。赤小豆洗い。宿毛市中山田。寺の門外におり、ときどき、夜更けて赤豆を洗う音をさせた。半時ばかりして止んだという。

 

  • アソビビ

火の怪。遊火。三谷山。色青く、遠方から見ると毬のような火。眼前にあるかと思うとすぐ五町、十町も離れる。一つになり、数十になり浮遊する。

 

  • エンコウ

水の怪。河童。吾川郡神の谷村─川の突堤で馬をつかんだエンコウの手を一晩中ねじった男がいた。他の男が見ると、腕はずっと下流まで続いていて、エンコウがねじれを必死に戻していた。土佐郡地蔵村東石原─エンコウが農家の嫁に魅入ったので、猟師が淵にむけて鉄砲を構えると、それだけでエンコウの腕に穴があいた。のち、この猟師に祟ったという。高岡郡戸波村永野石田─有為ガ淵で駒引きに失敗、「ウイゾノーウイゾノー」と呼ぶところを村人に打ち殺された。地名の由来とする。高知市・香美郡下田村─捕らえられたエンコウが、高知城下では天神の子は取らぬ、下田村では下田生まれは取らぬと約束、そこで高知近在の子供は「下田生まれで天神氏子」といって水に入る。高岡郡檮原村─エンコウが命を助けられた代わりに魚を届けていたが、木鉤を鹿の角に変えてから止んだ。幡多郡十和村─鹿の角を嫌うという。相撲を挑まれたら手に唾をつけると逃げる、そうしないと木や石をぶつけられる。歯くそも嫌うので人が噛みつくと正体を現す。盆の十六、十七日に川に入ると尻を抜かれるという。中村市久保川─漁師は魔おどしに鹿の角を携行する。高岡郡西川津からエンコウの傷薬を売りに来ていたという。長岡郡下田村─三十尋ひろばかりの綱を体に巻き、残り六尺で馬を引いたが失敗、捕らえられて人獣すべてに害をしないと約束して解放された。村ではそのかわり六月十五日に河童祭を営むことを定めた。幡多郡津大村、駒引きに失敗、手水桶に魚を届けていたが、鹿の角に変えたところ止んだ。吾川郡御畳瀬村─千屋惣之進の家に河童が報謝に持ってきたという珍器がある。皿のようなもので、水難除けのほかに疱瘡平癒のまじないになると有名だった。エンコウには婚姻の相談などは聞かせるものではない。もし立ち聞きされると、必ず嫁入、婿入の時に化けてきて人を迷わす。だから一般に密談するときはまず弓弦を鳴らして退散させる。郡間崎─元文三年、捕らえたという。三歳ばかりの童子で体は鯰のようにぬめり、顔は猿のようであった。手も猿のようで長く爪があり、足は人のようだが前三つ、かかとに一つ爪があった。エンコウは川童子にひとしく、川太郎は獺が歳経るとなるという。

 

  • カマイタチ

道の怪。鎌鼬。高岡郡須崎。野鎌ともいう。にわかに風がサッと吹くと、人は気絶するが、瞬時に蘇る。襦袢と脚絆の隙間が骨際まで刀で切られたような傷になるが、出血も痛みもない。古暦を黒焼きして付ければ早く治るという。

 

  • カワウソ

水の怪。河童のこと。相撲をとるのが好きだが、頭を揺さぶって水をなくすれば弱くなる。前足が短いので、坂を上るのは早いが、下るときはよぼよぼしている。

 

  • カワミサキ

亡霊の怪。安芸郡羽根村などでは三人で川へ行くとカワミサキに憑かれるという。

 

  • ケチビ

火の怪。けち火。高知県には多い。たいていは人の怨霊が化したものとされている。竹の皮草履を三つたたいて呼べば近寄る。また草履の裏に唾を吐きかけて招けば来るという。

 

  • ゴギャナキ

道の怪。高岡郡新居村、幡多郡宿毛など。形は赤子のようで色白く、夜、赤子の泣き声を出して、行く人の足にまといつく。その時は草履を脱げば立ち去るという。

 

  • ザシキワラシ

家にいる怪。座敷童子。高知市。市内某家で午後からゴトゴトと何かの音がし、宵になると醤油樽が飛び上がり、行灯がカラカラ転びだした。十一時ころ止んだという。

 

  • シバテン

水の怪。川の堤などに出る。形はすこぶる河童に近く、好んで相撲を挑む。土佐郡土佐山村では小童の姿で幾十となく出てきて相撲を所望するが、相手になると化かされて一晩中、独り相撲をとらされるという。シバテンは旧暦六月六日の祇園の日からエンコウとなる。この日、川に胡瓜を流すのは、これに食わせるためだという。土佐には、これをコノハテングという所もあり、人をたぶらかす生霊の一種ともいう。

 

  • ジャン

海の怪。海上で夜中この音がすると、漁は全くなくなる。ゆえに事がにわかに止まることをジャンという。

 

  • タタミタタキ

音の怪。畳叩き。他地方ではバタバタともいう。夜中、畳を叩くような音をたてる怪。狸の仕業という。

 

  • タモトスズメ

道の怪。袂雀。夜、山道を歩いていくと前後にチッチッチと鳴いてついてくる。これに憑かれると不吉だと忌む。高岡郡東津野村ではこれをタモトスズメといい、憑かれたら、袂をしっかりつかんでいるとよいという。

 

  • チャブクロサガリ

道の怪。茶袋下がり。幡多郡奥内村でいう。道の薄気味悪いようなところに下がる。これに当てられると種々の病気になる。

 

  • ツエツキ

道の怪。杖突。土佐郡蓮池村。夜、杖の音をさせて通る者がいる。これに会った人はたちまち死ぬという。

 

  • ツチノコ

動物の怪。槌の子。

 

  • テギノカエシ

雪の怪。手杵返し。幡多郡でいう。足跡が一つしかなく、同郡橋上村楠山(宿毛市)では雪の山道などに一つ一つついているのを見ることがあるという。同じく十川村広瀬でも、これをテギノボウといって杵の形をし、錫杖の音をさせてとんぼがえりをして歩いてくる。夜の河原に出るという。

 

  • トウジ

火の怪。暴風雨中に起こる怪光のこと。

 

  • ネコノカイ

動物の怪。猫の怪。高岡郡の白姥ヶ岳に出た。山で一夜を過ごそうとしている猟師のところに十五、六歳の愛らしい少女に化けてきた。猟師の姪そっくりで、罪もない獣を殺すことを戒めた。猟師は曲者と気付いたが、とにかく側で一晩仮寝することを許した。しかし油断なく注意していると、丑の刻のころ、女の子の顔が次第に変わり始めた。目は大きく異様な光を放ち、口は耳元まで裂け、身長は七尺を越えた。猟師は山刀をそっと引き抜いて拳も通れと脇の下に突き刺した。怪物は七尺余りの大猫になり、悲鳴を上げながら山奥に逃げ込んだ。

 

  • ノガマ

動物の怪。野鎌。鎌鼬のこと。長岡郡東豊永村岩原(大豊町)では、新墓の上に鎌を立ててくるが、その野鎌の魂魄が集まって山中を通っているのに出会うと害になるといい、山で不意に怪我をすると、野鎌に切られたという。

 

  • ノヅコ

山の怪。幡多郡橋上村(宿毛市)でいう。これに出会ったら草鞋の乳首をやるか、草をちぎってチボ(乳首)にして投げてやると退散する。

 

  • ノブスマ

道の怪。幡多郡でいう。上下左右果てがない。切っても撃っても効果がなく、腰を下ろして煙草を吸えば二、三服する間に消える。

 

  • ヒダマ

火の怪。火玉。香美郡山田、高知、長岡郡改田村など、県内各地で見る怪火。瀕死の人の家から飛び出るという。

 

  • ヒトツアシ

雪の怪。一つ足。雪上に一本足の足跡を残す怪。

 

  • フルソマ

山の怪。古杣。長岡郡。山中で、伐木に打たれて死んだ者の霊だという。深山で日中でもこの声を聞くことがある。はじめに「行くぞう、行くぞう」と呼ぶ声が山に鳴りわたり、やがてばりばりと木の折れる響き、ざぁんどぉんと大木の倒れる音がする。行ってみると何事もない。

 

  • ボウズコ

山の怪。土佐郡土佐山村で芝天狗をいう。

 

  • マクラガエシ

家にいる怪。枕返し。高知市。小高坂森の屋敷にいた。試みに座頭を寝かせてみると、夜半、枕を取ってくるりと寝返り、北枕になった。本人は知らないという。

 

  • ミサキ

海の怪。宿毛市鵜来島。漁に出ているときなど、ミサキが舟に憑くと舟が全く進まなくなる。この時は舟の三ノ間から御飯を炊いた灰を落としてやると離れる。ミサキは海難や非業の死を遂げた人の霊ともいう。七人ミサキともいい、新しいミサキが加わると一人は仏になるので、常にミサキは七人という。

 

  • ヤマオトコ

山の怪。山男。沖ノ島。八尺ばかりで火のような赤い髪をかぶっていた。地に伏しているとどこかへ消えた。人々は猩々、四熊、狒々などと推測した。

 

  • ヤマガミ

山の怪。山神。山中の路辺の岩の上に女の首があった。髪を美しく結び、顔に紅粉を粧し、年の頃三十ばかりと見えて莞爾と笑っているようだった。一本道なので是非なく前に進んだが、何の害もなかった。

 

  • ヤマジイ

山の怪。山爺。土佐郡本川郷でいう山鬼。一眼一足で、人の往来する道を通るが、人に見られることはない。ただ六、七尺に一足ずつ足跡を残す。その形は杵で押したように径四寸ばかりの丸い形という。しかし山中で見たという人も多いといい、その形は人に似て丈は三、四尺、総身に鼠色の短毛があり、一眼ははなはだ大きくもう一つは小さいので、多くの人は一眼と誤解している。歯の力はものすごく、猪や猿などの首を人が大根を食うように食うという。

 

  • ヤマジン

山の怪。山人。土佐郡本川郷。一眼一足の山鬼。

 

  • ヤマンバガツク

山の怪。山姥が憑く。土佐郡土佐山村でいう。思いがけない豊作が続き目に見えて家運の栄えるのをいう。桑尾部落にヤマンバノタキ(山姥の崖)というところがあり、この近くに昔、稗畑を持つ者があって、毎年豊作続きなのを怪しんで火をつけたところ、老婆姿のものが半焼きになって飛び去り、それから運が衰えたという。東川部落にもヤマンバを祀る祠がある。昔、ある家で仕事をしている最中に何か欲しいと思って家に帰ると、それがちゃんと家に置いてあり、米櫃の米もきれることがなかった。主人が怪しんで早めに家に帰り、家の中をのぞいてみると、白髪の老婆が座敷を掃除していた。思わず声をあげると、老婆は飛び去り、それから家は傾いていったという。

 

  • ワライオトコ

山の怪。笑男。香美郡山北村。年十四、五ばかりの童子で、一町ばかり先から人を指さして笑う。初めは低く、次第に声高くなり、山も崩れるほどに聞こえる。退治しようとした武士は果たせず、笑い声は一生耳についたという。